坂東の系譜

昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」やっっと観終わりました。
いやー、面白かった。
何がいいって、脚本が最高ですね。
三谷幸喜の大河、冴えまくりですね。

最終話で予感的中。
翌年の徳川家康にエールを送るシーンがあるだろうと期待。
どうやるかは想像できなかったですが、まさか本人出すとは。
バトンはしっかり受け継がれましたね。

「真田丸」でも、大阪の陣で幸村が徳川勢の赤備えに対して想いを寄せるシーンがありました。
翌年は井伊直虎でしたから粋な演出でしたね。

今回、北条義時による武士の生き方改革が描かれたわけですが、ここから武士が政を行う幕府体制が明治維新まで続くことを考えると偉業としか言いようがありません。
武士の出口は刀を置くことですが、戦乱を抜けて平和になった後の武士の生き方を定義できたのは信長以降です。
信長も秀吉も到達できず、家康は平和までは到達したけど、幕府体制を維持することとの矛盾が埋められず武士に刀を置かせるところまではできませんでした。
刀を鍬に持ち替えろと理想はあったものの、結局は反幕府勢力と近代化の波に飲まれて武士の世は刀を置くのではなく奪われる形で終わりました。

争いは土地の奪い合いから始まっています。
それはあらゆる物資の確保を意味します。
法の整備、土地の管理、貨幣や手形の導入、士農工商穢多非人の階級による職業分類などを経て社会の基盤が安定するのに約700年の時を有した事になります。
問題は多かったもののとりあえずの形は作れました。
幕府体制の真価はこの時を稼いだことにあるのだと思います。
明治以降、幕府の後始末に新政府は心血を注いだのか?
犠牲者は多かった。
穢多の子孫は未だに差別されている。
残務処理をまだ終えていない現代ですが、義時がこの国を前に進めた意味、意義、価値はとても大きく計り知れません。


頼朝の「源氏の棟梁が征夷大将軍となって坂東で政を執り行う」夢を支えた義時が、頼朝亡き後、主語をすげ替えて北条が統治する野望に塗り替えていくのにどれだけの葛藤があったか。
想いを巡らせると学ぶことが多い。

結局、源氏の棟梁を頭領にするために義家の血流である足利尊氏と新田義貞が鎌倉を滅ぼして室町幕府へと移っていきますが、新田が鎌倉を攻める時の作戦。
義経が梶原に送った書状の中に記されていた鎌倉攻めの策はこの新田の策そのものなのだそうです。
義経の書状は三谷の創作らしいですが、この書状を読み込む梶原の嬉しそうなこと。
義経に対して複雑な想いがあったであろう梶原の真意が読み取れるような素晴らしいシーンでした。


室町時代を挟んで戦国時代が始まるわけですが、足利義昭を担ぎ上げて室町幕府再興を計った信長は義時に重なる部分があります。
その後、義昭を追放し幕府を終わらせた信長が成したかったのは武士の世を終わらせること、商人の世にしたかったはずですが、掴みきれなかった夢は略奪と継承で光秀、秀吉が受継ぎ、信長の見てた夢を理解していた家康は世を平定するために幕府のシステムを利用しようと自身を新田の家系に紐付けることで征夷大将軍となって、鎌倉、室町の統治システムを踏襲し江戸幕府を開きました。
武士の世を作りたかった頼朝と義時。
武士の世を終わらせたかった三英傑。
なんて壮大なのだろう。


三谷劇場で描かれた鎌倉時代。
最高でした。
キャスティングも最高でした。
終わり方が凄まじい。
大河ドラマでこんな終わらせ方、やばすぎます。

本当に最高の作品です。
ありがとうございます。


義時に主軸を置くと政子の印象はかなり変わりますね。
北条政子と云えば永井路子ですが昨年、亡くなられています。
伊東祐親役を演じるはずだった辻萬長も亡くなられています。
ご冥福をお祈りします。


古沢良太の家康がどう駆け回るのか。
楽しみです。

もうとっくに始まってますね。
追いつけるかなあ。