子の心親知らず

大人と子供は棲む世界が違います。
大人の忖度なんて子供には知ったこっちゃないし、子供の一大事に親は取り合いません。
それでも、親はいつでも子のことを想っている。
いつでも心配し見守っている。
だから親の心子知らずなんて言う。

でも、大人たちはみんな記憶喪失だ。
子供だった頃のことをなんで都合よく忘れてしまえるのだろう。

僕は大人が嫌いでした。
好きな大人もいましたがそれは例外で、基本的にはみんな嫌いでした。
当然、親とも確執がありましたし、教師を信じることなどできませんでした。

歳を取るにつれて自分が大人に汚れていくことがわかれば死にたくなったし、このままで大人になる方法はないだろうかとも考えました。
でも毒されて普通に大人になっていく自分をいつからか諦めていたし、大人を理解できるようにもなりました。

大人になって、親になって、やはり親の心子知らずなんて言いそうになります。

でも、あの頃、自分を理解してくれない大人に牙をむいた感情を思い出すことも出来ます。
子供の小さな世界では、目の前のことが全てです。
その一大事を嗤う大人にどうして心が許せよう。

息子を見ていると切なくなります。
環境に恵まれない子にはしないであげたいと励んできましたが、そんなものは意味がなく、必要なのはハートフルなコミュニケーションなんですね。
僕は仕事が大事だし、何よりも優先しますが、それはあの頃の自分を慰めることでもあります。
子供のころになりたかった自分に成っているわけではありませんが、あの頃の自分に会っても恥ずかしくはありません。

息子があの頃の僕のように生きるなら全て許して受け入れようと思います。
そうはならないで欲しいですが血は濃いですね。

息子を理解しているなんて言うつもりはありません。
そんなことは決してなく、ただ、僕は味方だぞ、と言いたい。
それだけを伝えたい。

子の心なんて知らなくっていい。