大人になってもわからない

嫌な記憶を忘れ去る特技を持っています。
さっさと忘れて次に進みます。

でも、実は忘れてなんかいなくて、とにかく紛らわすために上塗りを繰り返しているだけです。
ひたすら塗りつぶします。

最近やたらと昔のことを思い出します。
なにかのきっかけで蘇ります。
決して鮮明ではなくて、都合よく解釈しようとしている自分に気付きます。
あの時どうであったかを正確に知るには自分の記憶はあまりに心許ない。


身を裂く程の苦悩も、対象のない訳の分からない怒りも、いつか失くしてしまっていました。
乗り越えて成長したわけでもないし、押しつぶされて病んだわけでもない。
大人になったからだろうか。

歳を重ねるだけで大人になるわけではあるまい。
苦悩は僕を育てるはずだった。
怒りは僕を活かすはずだった。
僕は歪な大人になったと思う。
あの頃探していた答は見つからないままで、今また探そうと思っても問いを失くしてしまっているから何もできません。

たぶん、早く大人になりたいと思っていました。
大人になれば何かがわかるような気がしていました。
何かはわかったかもしれませんが、何かがわからなくもなっています。
たぶん、当時わかりたいと思っていたことは今でもわかっていません。

かつて諦めたものが、時を経て別の形でその時の僕に相応しい形で現れ手にした体験があります。
大人になったからできたことなのか。
似たような事をまた起こせるのだろうか。

その意味を知りたい。